少し前の話になりますが、2022年の取り壊しが決定している銀座「中銀カプセルタワービル(なかぎんカプセルタワービル)」の見学ツアーに参加したのでその時のことを。世界で初めて実用化されたカプセル型集合住宅の内部を見学するという、貴重な体験をさせていただきました。
中銀カプセルタワービルとは
建築家・黒川紀章氏の初期の代表作かつ建築運動「メタボリズム」の代表的作品として知られる中銀カプセルタワービル。細長い2本の塔に140個のキューブ状カプセル(部屋)がくっついているという何ともユニークな建物です。
黒川氏の当初の構想では個々のカプセルを25年毎に交換するつもりだったということですが、実際は建物の構造上難しく、一度も交換に至っていないのだとか。そうこうしているうちに建物は年々老朽化。深刻な劣化と建築材へのアスベスト使用を理由に建て替えが長い間検討されてきたそうですが、残念ながら2022年3月以降の取り壊しが決定。現在は解体に向け、全戸調査による記録保存、カプセル躯体とオリジナルパーツの保存などの保存・再生活動が進められています。
いざ建物内部へ
取り壊しまでの間、この歴史的建築物の内部を見学できるツアーが不定期で開催されているということで、私も今回参加してきました。
ツアー当日はビル1階のエントランス脇、ビル名の銘板の前で集合します(一部文字が取れて「カフセルタワーヒル」となっているのはご愛嬌ということで・・)。私が参加した回の参加者は計6名。こちらにツアー主催者であるガイドさんが加わる形でツアーがスタートしました。
なお、ビルには現在も居住者、事務所として利用している方が複数いらっしゃるということで、プライバシー保護の観点から1階ロビーの集合ポスト周辺は撮影不可とのことですが、それ以外の部分については撮影が許可されています。私も写真を撮影してきたので順に載せていきますね。
まずはエレベーターで上階へ。2本の塔の連結部分へ向かい、そちらでビルについての解説を聞きます。ガイドをしてくださった方は自らが数部屋を所有しているオーナーさんなので、建物について詳しいお話をうかがうことができました。
お話をうかがっている最中、ふと頭上を見上げると大きなダメージが。これ以外にも傷んでいる箇所があちこち目につき、劣化が相当進んでいることを実感させられます・・。
カプセル内部の様子
建物についての概要をうかがったあとは、カプセル内部の見学へ。各カプセルの広さは10㎡と聞いていましたが、思っていた以上に狭いな~という印象を受けました。元々は銀座周辺で働くビジネスマンの平日用セカンドハウス、オフィス利用を想定した物件だったということで、キッチンや洗濯機置き場など、生活感を感じさせる設備がないのが特徴です。平日は銀座でバリバリ夜遅くまで働いて、週末のみ郊外の自宅へ帰る・・。そんな人たちに向けた物件だったようです。
見学させていただいたカプセルには、売り出し時にオプションで販売されていたというブラウン管テレビ、ラジオ、電話機などがそのまま残っていました。
真横の丸窓も相まって、なんとも未来的な雰囲気の空間です。
入り口入ってすぐ右手にはこれまたコンパクトなユニットバスが。
便座の脇に灰皿が設置されてるのに昭和を感じてしまいました。
ツアーはこちらのカプセルの見学をもって終了となります。所要時間は1時間弱というところでしょうか。建物についてのお話をじっくりうかがえたうえ、写真撮影の時間もたっぷり設けていただき、大満足のツアー参加となりました。
このような歴史的な建造物が東京からまたひとつ消えてしまうのは残念ですが、老朽化や修繕の費用負担を考えると解体は致し方ないのかなと思います。せめて有志の皆さんによって進められている保存・再生活動が上手くいくことを願うばかりです。なお、今回紹介したツアーの参加費3,000円はそういった活動にかかる費用に充てられるとのこと。保存・再生活動や見学ツアーの詳細は「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」のサイトに載っていますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
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